扁桃はかつてはその役割がわかっていなかったため、切り取る(摘出)事が多かったですが現在はその働きが理解され、安易にはおこなわれず一定の基準の基に行うことになっています。
扁桃の役割とはその位置を考えると理解いしやすいのですが、鼻、口からの異物の侵入に対する関所の役割です。細菌やウイルスが侵入すると扁桃にあるリンパ球から抗体をつくって、病原体と戦うわけです。抗体は生まれたときからすぐ作れるわけでなく、徐々に抗体を作る能力が備わってくるようです。その免疫能の発達とともに扁桃も成長し、大きくなります。その発達は4~6歳ぐらいをピークとし、一般的にはその後徐々に縮小するのが普通です。保育園・幼稚園に通うようになったら急に扁桃が肥大したというのはこの自然経過を言っていることもあります。
さて、それでは扁桃を取る基準とはなんでしょうか。まず扁桃が繰り返す感染巣となっている場合で、繰り返す溶連菌を始めとする細菌感染症です。単に喉が腫れている、赤いというだけでは摘出の根拠にはなりません。幼児期ではヘルパンギーナ等のエンテロウイルスや、アデノウイルス、インフルエンザウイリスなどの咽頭を病巣とする病気が多く、しょっちゅう発熱することが多いですがこのことは扁桃を摘出する理由にはなりません。しかし、実際に感染巣がある扁桃あるいはアデノイドを抽出すると発熱が治まるとともに、 出性中耳炎や副鼻腔炎、腎炎(溶連菌感染の場合)が同時に治ることもあります。また、年に数回以上扁桃が腫れて発熱を繰り返す時は、習慣性扁桃炎、慢性扁桃炎として取る場合もあります。
もう一つの基準は扁桃が肥大しているために睡眠時 が強く、呼吸困難になる患者さんです。こういった患者さんにはOCFCでは2晩ぐらい自宅で睡眠時にモニターをつけて頂いて血中の酸素飽和度を調べます。(痛くはありません)それで異常があれば大学病院に紹介して、1晩脳波と心電図と呼吸を調べ、咽頭肥大が原因であれば扁桃摘出ということになります。その他肥大により飲み込みができない方も取る場合があります。扁桃は感染を防ぐ上で大切な臓器です。摘出すると元には戻せません。取るかどうかの判断は慎重にありたいものです。(OCFC院長)